メルヘンの影 変身 梟の首/青の詩人
 
夢を見ない者たちに
夢を届けにゆきなさいと
言われ
白鳥は怖気づいた

飛び立ってしまったら最後
戻れなくなるような気がしたから

その昔
どこかの国の王子だった
ことも忘れて
目に映る魚だけを
せっせと飲み込んでいた

水しぶきがお話する朝
真実は曖昧だ

変は外から訪れる
春がそそくさと去る少し前に

あくまで自分のためだけに
したためておいた翼を
初めて自分以外の
誰かのために広げた

その羽が
物語の一頁目

侵食が
この森ではじまったと
知恵ある魔女たちの噂

現を飲み込みし夢

ちょうどその頃
湖の
底のほうで

[次のページ]
戻る   Point(1)