潜水艦のゆめ/八月のさかな
若い青葉に滴が冴えて
ぬるい空気のなかで雀たちの声が朝露に濡れる
そうやって世間はあたらしい季節にそわそわしているのに
留まろうとしてるひともいる
分かるはずもないんだ
誰によってあなたがあなたになっていったかとか
何によってあなたが幸せになるだとか
分かるはずもないのに
何でも分かっているみたいな顔をして
誰かを必死に責めるひともいる
優しいだけじゃだめなんだ、なんて言いながら
何よりもじぶんの優しさに傷ついて
こんな透明な空のなかに
からだを投げ出すひともいる
ただ夜を仕舞って
おとずれた朝を笑顔で迎えて
日が暮れるまで楽にすごして
夕闇のなかでふうっていちど笑えたら
あとはぐっすりねむるだけなのに
何のために
誰のために
どうなりたくて
なにがしたくて
止まらない思考をとめて
やめられない癖をやめて
ただ、見つめて
潜水艦が空にしずむ
沈没船が、波をかきわけておよぐ
ここでこうやってずっと
深い深い海の底できみとひとつになろうとしてる
そんなわたしもいる
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