◆春うたまつり/千波 一也
 




雪解けの水がつるり、と窓にいて
陽射しはひらり
春、うたまつり



じわ、
じわり
布団を抜け出る子のように
ひとつ、ふたつ、と三月の砂利


太陽に追われて雪はしゅわしゅわわ
「もう、吹雪けないよ」
ぴちょん、ぴちょん



背伸びして空をあおげば雲、ふわわ
眠りたりない桜もふわわ



るる・ら・るり
ことばをかじる子のように
鼻歌まじりのたんぽぽ曜日


あてもなく
「お元気ですか」と問うてみる
綿毛に吹かれて
さらさら、
さら、




いのちとは
風をながれる玩具です
きらきらゆるり、と
春をそよいで








[グループ]
戻る   Point(2)