帰り道/ さくら
描きかけた まるい絵を
仕上げた事はなかった
曖昧な空に 風船を放つ
重さなどは いらない
この世界のたくさんの声が漏れて
帰り道、溶けそうな歌声に酔う
わたしはわずかに軽い
加速する毎日には、深夜の外灯が
さびしそうに、自然と寄り添っている
時を運んでいるのは唯一、車のオーディオ、
あるいは、蛙の季節を告げる声
だったかもしれない
描いては消えていく
景色に、ひとひら、交差して舞う
自分で決めた姿に重さを忘れて
けれど、青は青色に決まっていて
今日もまた振りかえると
帰り道に舞う 綿毛だけがあった
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