イデアの国 /服部 剛
工場には
一つの巨きい機械が常に作動し
ベルトの上に運ばれる
「商品」は次々に仕上がり
( 巨きい機械を組織する
( 無数の小さい歯車達は
( 涙を流す、暇も無い・・・
*
パソコン画面の内側に
一つの架空の家があり
今日も無数の言葉は
張り巡らされた回路を巡り
( 指にふれない「一つ屋根の下」に住む
( 独り独りのデジタル人形の胸に
( 幻の赤い心臓が(ホント)を探して、脈を打つ・・・
*
いつのまにか
偽りの機械の一部に、なっていた
幻の家族の一員に、なっていた
21世紀の人々は
霞掛(かすみが)かった都会の空を
突き破って飛翔する
鳥になった、夢を見る
やがて世界を覆う
夜空を行き交い
互いにすれ違ってゆく
蛍の群の灯火達
*
私は今
自らの体重を乗せて撓(しな)る
飛び込み台の上
目の前には只
茫漠と永遠の広がる
「開かれた世界」
戻る 編 削 Point(8)