「 古書ノ声 」 /服部 剛
休日はらんぷの灯の下に
古書店街で買った
古びた本の、頁を開く
少し引っ張れば
すぐに千切れてしまいそうな
薄茶けた頁に並ぶ無数の黒字は
遠い過去から語りかける
音の無い声で
「 幸福の秘密 」を
そっと、耳打ちしてくれた。
もし、あなたが
夜の牧場を彷徨う子羊ならば
胸の空洞に(何か)が欠けているならば
今度、休みの日に
古書店街を
日がな探索すればいい
棚にぎっしり並ぶ
古(いにしえ)の本達に宿る
それぞれの宇宙
黙した頁の内側から
囁きかける
無数の星の言葉を秘めて
一冊の古書に隠れた
作者の魂は、待っている。
外の明るみから
本屋に入って来る
あなたの足音を
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