生き物と食べもの/猫のひたい撫でるたま子
映る生き方の人だ。リアリティーを追求した末、人に諦めているから人を憎まない人。私には到底できない境地、もしかしたら世代の違いもあるのかもしれない。
そんな会話でうどんすきを食べた。生の海老を入れるときにお店の人が、「尻尾から入れないと跳ねて服が汚れます。」と注意した。食卓に上がっていようが、生きているから海老が熱がるのだ。透き通った灰色の海老は熱湯の出汁の中でもがいた。もがく瞬間だけ少し胸が痛んで、それが普段見慣れている海老の通りに赤く茹だってきた頃には、旨そうな食べ物に変わっていた。
何かを食べないと生きていけないっていうだけで残酷な話だ。中国では犬肉がよく売られていた。中国在住の日本人女性は犬が好きだから食べないと言っていたが、菜食主義も、イスラムの豚肉を食べない食事も、無神論者の私にとっては意味不明だった。私には食べられる体があるのだから、好き嫌いはあっても出されたものはなるべく頂こうと心に決めた。
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