「 猫ノ薬 」 /服部 剛
 

ずっと待っていたかのように 
黙って瓶を、手渡した。 

(「猫ノ薬」と 
( 瓶のラベルに描かれた 
( 碧い眼の黒猫が 
( 口を開いて、鳴いていた

僕は棚の引き出しの奥に
ずっとしまっていた 
薬の瓶の蓋を開け 
その中の一粒を 
箱に入れて 
今日、君に贈ろう。 

その透き通った 
一粒の薬を 
飲む時 
君は自らを充たしてゆく 

これから語り始める、君自身の台詞。 
これから演じる、君自身の役。   
暗がりの、照明灯に照らされて 
日々の舞台に凛と立つ  
詩人は孤高の唄を、呟くだろう 







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