『切迫』/あおい満月
 
風のぬくもりが
わたしの瞼を閉ざす

風のぬくもりが
髪を掬う指先を早める

風のぬくもりが
昨日の足音 響かせる

風のぬくもりが
終わらぬ唄を 呼び覚ます

風のぬくもりが
あなたの諸手を求めだす

風のぬくもりが
あなたの雨を 飲みたがる

風のぬくもりが
重い鼓動を 誘い出す

風のぬくもりが
わたしのこころ
閉じ込める

蛍光灯の下
痛みを謂えない
時間に挟まれて

夜に挟まれて

すべてを失いながら

明日の朝

あなたがそばに

立っていることを

ただ 切に願う




                     第三詩集・『絆』より

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