両手ノ像 /
服部 剛
ある日、意表をつくように
(体の透けた人)は
微かな足音も立てずに
この胸の扉の鍵を開けて
足を踏み入れて来るだろう
私は三十三年の間
世に産声を上げた
あの日から
今日迄
目を開いていなかった
自らの為に何かを欲しがり
飢えた手をさしのべる時
(体の透けた人)の姿は
身を隠したように
全く見えなかった
自らの一切を捨てて
求めるのを止めた時
私は観た
私のまことの幸いを願い
一心に組み合わせ
光を帯びた、風ノ両手を
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