「 遥かな国 」 /服部 剛
 
一人の人間の内の 
最も奥深い処に 
遥かな昔 
全ての大事な人が流された 
あの大洪水の悲劇がある 

全てが流れ去った 
広い空の下の荒地に 
たった一人取り遺された 
遠いあの日の記憶 

そして遂に思い立つ 

「この荒れ果てた地に一軒の 
 (思想の家)を建築しよう」 

21世紀という時代の 
限り無い「物」に囲まれながら 
それらは全て 
この手に触れ得ぬ
蜃気楼の(幻) 

(透き通っているのは 
(私の「手」なのか「物」なのか・・・ 

「今こそ自らの内に、建築しよう 
 時代の風に流されぬ 
 一軒の(思想の家)を    」 

たった一人大地に立ち 
瞳を閉じ 
(陽の光を全身に浴びながら) 
胸に手をあてる 

内面の最も深い処に在る 
遠い昔の(遥かな国)で   
光に包まれた
一人のひとの黒影は 
そっと耳を傾けている 

古の青い空に響きわたる 
あの 
小鳥等の唄声に 







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