木彫ノ人 /服部 剛
 
天井から吊るされた 
木彫りの人が 
諸手を上げたまま 
宙に浮いている 

それは 
あまりの苦しみに悶え 
背を反らすように 

それは 
大きな歓びに 
飛び込んでゆくように 

( 背後には、透明の十字架が 
( 薄っすらと立っていた・・・ 


  * 


日々の連(つら)なる場面に 
恐れからの一歩を
踏み出す 
飛び込みの、瞬間


いつか 
人は空へと 
吸い上げられてゆく 
その日まで 


  * 


天井から吊るされた 
木彫りの人 


透けた体が 
跪(ひざまず)く私に 
スローモーションで 
飛び込んで来る  


( 心象の野原を 
( 一陣の風 
( 吹き抜ける 







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