寂寞/渡辺亘
 
あの時
何もかも終わっていた
終わっていなかったのは
心臓が動いていることだけだった

ゴールはもっと先にあると信じて
走り続けた
体力はありあまっていると信じていたが
実際は何も残っていなかった

悲鳴をあげる筋肉を
ドーパミンでごまかして
暴走する思考を
セロトニンでだまして

あの五年間は
僕にとって逢魔が時
一瞬たりとも休息の時間はない
走り続けた

きっと走り続けることが青春というならば
それが青春というのだろう
僕は人生が初まっていたのに
青春は続いているのを信じて
五年間も走り続けてしまった

恐怖の五年間が終わり
統合失調症の十
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