アマ/あおば
 
               090427

アマが駆ける
  アマが
山の端に
月が出て
物語を始める

悠久の時を
お椀に装って
しゃなりと
口に運ぶ
運送屋のフデさんは
少し耳が遠く
足が曲がっている
車の運転は上手なので
まだしばらくは稼げると
意気地無しの連れ合いは
胸を張る
くたばりぞこないが歩く道は
凸凹して
歩きにくいのだが
国有地だから
誰も手入れをしたくない
草が生え
実が成って
コオロギが隠れると
横町から車が顔を出して
自転車を刎ねる
歪んだ三角フレームを手に
首を捻る少年の嘆きを
無視して新聞配達する
青年たちの
黒光りする頑丈な自転車も
アマが駆けるときは
道を譲り
山の頂にさしかかる月が
今夜の
物語を終わらせる

明日の夜は

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