波打ち際で/服部 剛
 
の海に浮かべてみる

ふわり ふわり
高く 笑う 朧月(おぼろづき)の方へ

江ノ島の 灯台放つ 光線が
霧を破って 友の面影を淡く照らすよ

さっき改札で見送った友は
日常とのピントがずれた
浮かぬかげろうの背中で・・・

友よ
この世には いろんな風があるものさ

この俺も
どうしようもなく夜空を仰ぎたくて
リュックを枕に寝転んだら
遥か 遠くの 台風から
海面を這ってきては
風に舞い上がる砂を顔に浴び
じっと 目を閉じるありさまさ
ここに 独りで

そんな呟きを
互いに口にする年齢(とし)でもないが

改札で見送った君の後姿には
ビールの缶を片手に
乾杯の合図を送るんだ

ふと 凪いだ 夜風は
醒めた頬についた砂の汚れを
拭う手のひら 

そろそろ
歩いてきた浜辺の足跡を辿り 
家に帰ろう 







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