からたち列車/あ。
おもむくままに、旅に出ようか
規則正しいかたかたとした音は
恐らく鞄に忍ばせた貯金箱
目を閉じればそれは
大きな機関車のタイヤに変わる
太陽はなだらかに線路を作り
どこまで続いているのかわからないけど
走らせて見ようと思った
かたかたと進むと
背よりもずっと大きい生垣
からたちの木が並ぶ
そのつやつやしたとげに見守られ
魅入られながら通過する
ちりちりちり
軽快な鈴の音に振り返ると
少し気の早い子どもが
手に小さなこいのぼりを持ち
こいと一緒に音をおよがせる
小高い丘へと線路は続く
導かれるままに進んでいく
素っ気無い土は不意に緑を生み
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)