空虚を越えて/百瀬朝子
青空から真っ白い
雪が落ちてくる
所在なきものたちが
幸福を連れて
地上にやってきた
見えないところで定着
成長する細胞のはじまり
子宮でお遊戯会が催される
喘ぎ声がBGMの夜は深く
眠るのも忘れて戯れようとは
ひとりぼっちの空虚を越えて
一瞬の快楽を手に入れる
内側から扉を叩く
生命の炎がゆらぐ
呼吸する
他所(よそ)の世界がひずむ
産声高らか
嗚呼、
へその緒が乾いていく
満たされない自分に
ひとりぼっちの
空虚が沁みて痛む胸
まだ見ぬ明日に希望的な夢を描く
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