夜桜の扉/楽恵
 
音もなく

扉を開けて

君はどこへ行こうとしているのか

山の谷間にひっそりと

古桜

君は黙って立っていた

浅い夜に着替えるため

うつろに沈んだ夕闇に

青と紅は許しあい

混ざり合う

儚いまぼろし

髪にかかる紫の匂い

そして過去

足音もなく過ぎ去った夢よ

四百年目の生命が

落ちて山道の紺地へ溶ける

君の声がふと聞こえた気がした

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