野良犬/モリマサ公
 
びっこの野良犬の顔が父親の顔で 
「まさこ元気か」と語りかける 
精神科の待合室で半狂乱し押さえつける人を噛みちぎる老婆 
これが妹 
段ボールの下に新聞紙を敷き詰めてネズミたちが家族のようによりそう 
埋まるように寝ている娘をみかける 
母親はゴミ箱をあさって食べ物や服をひっぱりだしている 
その表情はまるであたしのそれだ 
殺し合いの生暖かい血の流れを拭き取っている家族も 
冷たいタオルケットにつつまれただけの老人も 
やさしいくたびれた柔らかい手の娘にも 
キーはいつものようにひらき 
日常という名のスペクタリズムがもうすでに 
なんか今のあたしたちににはぜんぜんもう関係なくて 
時々窓の外をとおる外気にあふれた奇跡を 
この画面をみつめてるあなた方の背中へ
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