橙の男/
あ。
庭の片隅に一本
忘れ去られたようなびわの木が
何の感情もなく立っていて
鮮やかなはずの橙色が
あまりにも風景に溶け込みすぎていて
目立つことも主張もすることなく
素っ気無くその実を揺らしている
一つ手に取りかじってみる
しっかりと歯形が残る強さ
その味すらも素っ気無く
きっぱりとした潔さすら感じ
ふと
男性的だな
などと思う
振り返れば宵の月
このびわと同じ橙色で
思わずつかんでかじりたくなった
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