肝機能とわが身/多々田 駄陀
 
同棲の夜なんだから男と女がよかったなと、まじめなアナウンサーが泣いて放送を続けるなら、もっと日本人は心の手をつなげばいいと、足並みそろえて走ってゆく馬の一群。太平洋に電気を走らせ、大気をああああああああああっと揺らす。腐れてゆく悪意の融けそうな南方へ!裸が幸福だった、過ごしやすかったよと言う同級生がホテルの向かいに逃げろと叫ぶ。なぜか愛せなかった歓喜を南へ!南へ!と、でかい声で答えた私。の 移動して止まろうとしない昔の恋人が低い室で待ってはいるが、掃除しなくちゃ。そりゃ俺なんかもっと知らないけど、まあ、ついこないだ、初めて店内の電灯が北へ倒れ、水蒸気の陳列棚が東西に炎の海を両断して、暖かい複雑怪奇
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