変形したママのその後/初代ドリンク嬢
 
といっても、
ママは本当には
死んでいない

はじめはゆっくりと
そのうち急速に
関節が曲がり、膜が張った目だけをギロギロと
なんだか得たいの知れないものになった。
小さく小さくなって
ポケットに入るくらい小さくなった。

そのポケットのママは
パン屋さんとお餅屋さんの前を通ると
「腹減ったぁ」「腹減ったぁ」と
大声で叫んだ。
時々、
「ごめんよう」「ごめんよう」と
小さく泣いた。

うるさかったので
川に流そうかなと思ったりもしたけれど
やっぱりそれはママなので
パンとお餅を買ってあげて涙を拭いてあげた。

もういいのよ、というと
そこはちょうどパン屋さんだったので
「腹減ったぁ」「腹減ったぁ」と
ママはやっぱり叫んだ。
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