タイカリー/ふくだわらまんじゅうろう
 
     タイカリー



小さな店の
タイカリー
わたしは、きっと
恋をしていた

その店の二階の窓からは
狭い通りを見渡せた
わたしはなんのかのと口実をつけて
デートに誘ってはそのタイカリーを食べに来た

誰もいない昼下がりのプラットホーム
夏の光に包まれた沈黙
そして嘘は煌めくほどに嘘だった!
通過列車の窓に君の横顔が映っては消えた

人がどのようにしてあのあまりにもセンチメンタルな三年間を選んだのか
すべての経歴を停止させたその期間、わたしは
自分が流されてゆく小さな無人島に持ってゆくべき
一冊の本よりも儚い存在だとわかっていた

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