貸金庫/ふくだわらまんじゅうろう
 
     貸金庫



   ああ
   いまひとつ
   勇気が足りない
   しかしやってみるしかないのだ
   無理矢理にでも
   自己に課してみなければ



それでも貴方は否定するのだ
今までに見たこともないような屁理屈を接続して
私が訊いているのはただ
その貸金庫の中身ではないというのに
頑なに一攫千金の夢を握りつづけて
どこまで漕いでゆこうと言うのか

その金庫の中には何もない
何もないということが前提にあるからこそ
その金庫の鍵はこんなにも幸福なのだ
しかし「何もない」ということ以上に重要で
意味深いものがこの世にある
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