空の白球 〜母校の校庭にて〜/服部 剛
母校の玄関前の
階段に腰かけ
近所の青年達がキャッチボールをする
人気(ひとけ)少ない校庭をみつめる
夕暮れの刻
瞳を閉じれば
22年前の夏
陽炎の揺らめく地面の向こうから
野球少年だった僕等の歓声が
聴こえて来る
原選手に憧れて
背番号「8」をつけたのに
ライトを守った補欠の僕
今は亡き監督が、ノックで打ち上げて
青空から落ちて来る白球にグローブ伸ばし
ボールを掴み損ねては、地面に転がり
ユニフォームを汚したまま、立ち上がった
あの日の野球少年
瞳を開けば
キャッチボールをする
青年達の姿はすでに消え
陽の暮れかけた校庭は
ひっそり静まり返っていた
大人になった日々に
少々くたびれていた僕は
玄関前の階段で立ち上がり
もう1度、思い出す。
青空に舞い上がっては、落ちて来る
あの白球に
目一杯、腕を伸ばした
あの瞬間を
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