「 卒業証書 」 〜母校の教室にて〜 /服部 剛
教室に入る
あの頃よりも
いつのまにか
教室は狭く
机と椅子は
小さくなっていた
「この景色が最高なんだ・・・」
教室の窓から
校庭の先に見える
小動岬と江ノ島の間に広がる
腰越の海をみつめ
先生は呟いた
僕は封筒から
原稿用紙を取り出し
母校に来る前、自宅で書いた
「先生への手紙」の
朗読を始めた
「卒業証書、授与・・・とは言えませんが」
読み終えて、少し笑った教え子は
腰越の海が見える教室の窓辺で
封筒にしまった手紙を
両手で
先生に渡した
*
幾人か
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)