蕎麦屋の蕎麦はそれでも君を待っている/ふくだわらまんじゅうろう
蕎麦屋の蕎麦はそれでも君を待っている
君がこの
罪の巷を見放して久しく
夢のまた夢のまた夢のまた
そのまた向こうの向丘遊園地に観覧車
そのクランクであんなにも素敵に引き伸ばされた麺の
麺の断面の側面の
いまだ我らの知り得ぬ一面の
面倒にもほどがあるほどの保土ヶ谷の
高速降りて海へ向かう車の助手席の
ああ、もう一度あの青春へ、青春へ、青春へ!
だけど君がこの罪の巷で見つけたものと云えば
それはただ単なる悪戯に過ぎなかったということ
そして蕎麦屋は今日もまた
君のために蕎麦を打っているというのだ!
それを知っていながら君が傾けること
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