春の入院/猫のひたい撫でるたま子
 
なのだろうか。

床掃除などは断念し、目の前の洗い物やなんかだけ片して病院に向かう。
家を出る前、紙が散乱するサイドテーブルから彼のプリクラが入った封筒を見つける。女の子と写っているものがあり、それが茶髪で元気のよさそうな自分と違うタイプの女性だったので少しムッとしたが、多くを見れば私と写っているものばかりだった。彼もまた私と同じように、同じ多くの時間を私と過ごしている。きっとそれを上回る親密さで恋人を作ったことがないのだろうと勝手に解釈をして私は安心をする。彼にしっかり恋人ができた暁には、私は必要のない人物になるのだろう。肌を触り、その人間の温度を確かめる、最早互いへの興味ではなく使い古
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