バスが通り過ぎた/北野つづみ
道端に
夜露に濡れた月草の群れが見える
遠くに白いアーチ橋も見える
橋を渡ってからは
走って走って気が遠くなるほど走って
時間がもう蜂蜜みたいにねっとりと
僕の顔に貼りつく頃
ふいに終点にたどり着く
天空の 一番高い場所にたどり着く
そこからは
人間がとても小さく見える
地球は広く 大きく
宇宙はそれよりも 広く大きい
僕の悩みもちっぽけだ
それで僕は安堵する
いま 窓の向こう バスが通り過ぎた
乗客も運転手もいないバスが
僕の心だけ乗せて
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