拾った子犬/北野つづみ
子犬はふくふくと温かかった
抱くのに心地よい重さだった
ゆっくりと地べたに子犬を置いて
あたしは
5階まで全速力で階段を駆け上がった
息を弾ませながら窓の下をのぞくと
子犬はきょとんと座っていたが
やがて
きょろきょろあたりを見回すと
商店街の横丁の道を
ひとりでとことこ歩いていった
あの温もりが必要だったの お母さん
親とはぐれた子犬とそれから
あたしに
そんな簡単なことが
どうしても言えなくて
夕闇が落ちてくるアスファルトに
子犬は白くにじんで
角を曲がって 見えなくなった
戻る 編 削 Point(7)