月夜の草 /
服部 剛
誰もいない静かな部屋で
時折鏡を、覗いてみる。
目はふたつ
鼻はひとつに
口ひとつ
奇跡を行うこともなく
些細な魔法もわからずに
背伸びをするわけでなく
身を縮めることもなく
上を眺めず
下も見ず
あるがまんまの(私)です
二本の腕を、ぶら下げて
二本の足で、立っている
変哲も無い、人間です。
静かな部屋の灯りを消して
暗がりの鏡に観えるのは
池の畔で頭を垂らし
夜露に月のひかりを映す
独りの草の姿です
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