アウシュビッツ/山崎 風雅
目の前には
いつ処刑されるかわからない毒ガス室がある
監視の目はいつも光っている
体は彼等の思いのまま
されど
されど
されど
精神は
心は
魂までは
彼等の思いのままにはならない
処刑される部屋に連れていかれても
最後の最後まで
私達は笑っていた
自由に ありのままに操れる心は
環境に負けることを知らない
人間にだけ与えられた
最高無二の至宝だと言うことを
想像さえ出来ない
暴君たちを
哀れんでいることに気づく様子はまったくなかった
哀れな境涯よ
人間をなめるな
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