アウシュビッツ/山崎 風雅
 
 目の前には
 いつ処刑されるかわからない毒ガス室がある
  
 監視の目はいつも光っている
 体は彼等の思いのまま
 されど
 されど
 されど
 
 精神は
 心は
 魂までは
 彼等の思いのままにはならない
 処刑される部屋に連れていかれても
 最後の最後まで
 私達は笑っていた
  
 自由に ありのままに操れる心は
 環境に負けることを知らない
 人間にだけ与えられた
 最高無二の至宝だと言うことを
 想像さえ出来ない
 暴君たちを
 哀れんでいることに気づく様子はまったくなかった
 
 哀れな境涯よ
 人間をなめるな
戻る 編 削 Point(1)