さよならシティ/山中 烏流
 
勝手に逃げたひとのせいで
今日も電車は来ない

向こう側のホームから
数日前に死んだであろう
女の嬌声が響く

もうすぐここも
ひとで溢れ返りそうだ

後ろのベンチからは
少女の泣き声が
聞こえる



   *



潮風の吹きまわる窓辺で
制服が飛んでいる

黒板の剥がれ落ちる音に
優等生だったあの子は
身体を震わせながら
耳を塞ぐ

私の手によって
開け放たれた窓から
飛び出していったのは

制服、だけだったろうか



   *



卒業記念の花束には

菊、それから栗の花を



   *

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