傍観者/ぽげ
頭がおかしくなりそうになり、脳内で壮大な物語を構築し、そのすばらしさに涙を流しながらバリ取りをしていたのが俺なのだ。
パン工場で働くとき事前説明会で「たまに指ちょん切られる人がいるから気をつけてね(笑)」と説明責任者に言われ唖然とし、実際にローラーに指を巻き込まれ指が引きちぎられそうになったのが俺なのだ。
ドカタのおっちゃんが砕石に飲み込まれて下半身不随になったり、弟の友人がユンボのキャタピラに踏み潰され、足から腰まで滅茶苦茶にされた、そんな話ばかり聞かされるのが俺なのだ。
スルー力。
そんな言葉を作り啓蒙しなくとも「まっとうな人々」は生き延びる作法として自然にそれを身につけている。
大いなる沈黙者たちよ。
滅びを見守る冷徹な眼よ。
俺は貴様らに宣戦布告をする。
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