1688の祝典序曲は/Giton
 
Folget,Brueder,eure Bahn! --- F.Schiller

 1688の祝典序曲は1789の交響曲を立ち上げ、そのアレグロの攻勢繰り返されるなか、1914のレクイエムが降臨する1969の混声合唱。幾千のレシタティヴォは、それぞれの軌道(バーン)を疾駆する星々、炎のただなかから、夜の霧から、現れた人影に、ぼくらは何十たび解逅したことか。
 ええ、そうでした。あなたの顔の醜い染みに、痘痕に、皺に、ぼくらは焔(ほむら)の痕を見て美しいと思つた。5月の魚(うお)の輪舞のようなぼくらに、唾を吐く権利を持つあなたは、白い手袋打って静かに讚美する。そうして経過したぼくらとあなたの蜜月、つかのまの10年:
 あなたの世界の名において、あなたは会うことを禁じられ、ぼくらは、静止した肖像画を見つめている。そうして経過するであろう幾十年。やがて、すべては消え去るであろう。歴史家の書には痕跡も残らないことをただ祈り。
 公転をつづける星々は永遠。底なき時空に。

 深く閉じ込められた涙は、ぼくらの頬を充血させた。

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