しあわせ/柊 恵
 
異変をこりて、診たてるに疾つされてあり。

君にも疾つしたと香澄に告げる。
透明な朝の光の中で、妻だけが凍った。
ミルクの白さふらり立ち上がり、手作りのお弁当、ゴミ箱に捨てた。
鷹揚のない声で
「今日は寝るまで帰ってこないで」

昼休み、外へ出た、
ポツポツと雨が落ちて、出た時は綺麗に晴れていたのに。
会社までは5分ほど。…思う間に土砂降りはらり、浴びるほどに濡れた。
天罰てきめん。
その日は何も手につかず、夢ともうつつとも、ただ怯えて。

音を殺して静まりかえった家に入る。
寝室に香澄はいない。娘の部屋だろうか。
思い浮かぶ笑い声は娘、ごめん、パパはばかだよ。もう
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