『レクイエム・レモン/ひかり』short version/川村 透
懐かしい喪服を着て笑っている
不思議な事に浜から見える火葬場の煙突に、煙はいつも見えないプラズマ、
棺をなめる炎は黒い太陽のフレア、なのだ。
「アインシュタイン交差点で待つ/ノーブルなプロミネンスに焦がされて死ね」
兄貴は行ってしまう真夏
の蜜柑、ひとつぶひとつぶが船に見えた連絡船だ
兄、と堤防から、しょんべんをした
波は引潮、僕たちのしょんべんも夕陽へといつかは流れ着く
堤防の足元を洗う貝殻どもは骨のように澄んだ音をたてる、しゃらん
僕たちは海の藻屑だ
君は喪服で
夕陽に向かって海をすべるように歩いてゆく、あに、もいつのまにか君の
うしろを歩く同伴者の一人、
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