『水割り』/あおい満月
 
 透明なかなしみが
 ういている
 逆さの世界に
 歪んだ空の隙間に

 そっと掌を忍ばせて
 沈黙した重力の風を
 わたしたちは
 そろそろと飲み干す

 風は影をまきながら
 空間に 声にならない
 唄をふらす

 冷たく固まった
 水が風に飛び込むと
 風は水に入ろうと
 水の扉をたたく

 風は冷たくなりたくないので
 風は唄で水をあおぐ

 水はゆっくり
 風にとけていく

 風と水の抱擁を
 見守るグラスは
 霞みながら
 汗をかいている

 きっとふたりの
 鼓動が伝わるから

 軈て誰も
 眠りに就いた

 夜の真ん中で
 ちいさな雨が
 眠っている




                          2009.1.31(Sat)


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