不揃い/黒子 恭
何もない午前、
僕達は不揃いに整列し
ソサエティの入口に放り出される
一斉に浮かぶ、群雲のやうに
流されていくだけの
モラトリアムだ
何もない午前、
教室では方程式が解かれ
与謝野晶子の詩が説かれ
汚れた黒板の黄昏れ
それはチョークにまみれ
青春を鈍く塗り潰している
とても鮮烈な赤ペンシルで
内出血をそこかしこ
書き殴ったノオトを
先生方は嫌味たらしく
破り捨てるとこう言う
「予習・復習はまだか」と
(魂をどこに
張り詰めればよい
人は知らず知らず
惰性にたゆとう
賢しげな落書きを
机に携えたまま )
何もない午前、
僕達はまるでメトロのやうな
真っ暗な線路を
強制される
未だ不揃いな整列で
行進が始まる
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