詩に嘘を書くということ/白糸雅樹
去年、谷川俊太郎さんへ質問する機会を武甲書店で得たときに、「詩を書いていてご自分の言葉に後ろめたい気持ちになることはないですかか?」と伺った。谷川さんは即座に、「ないです」と否定し、その後少し補足してくださった。「言葉は共有のものだから、読み手に対して責任はとれない。いかに美しく人をだますかというのが問題で、真偽についてうしろめたいというのはないです。」
これこそ職業詩人ならではの言葉だと感じ入った。同時に、自分の信条と離れたところで、キャラクターに憑依して詩を扱い続けたら、行き着く果ては、戦中の戦意高揚詩ではないかとも思い、私は拙作「兵士の歌」に対して、後ろめたさをぬぐえなかった。
これからも私は、相反する二つの後ろめたさを感じながら書き続けていくのだろうと思う。
2009.3.19
谷川俊太郎さんの言葉に関しては、詩誌「詩悠」より部分引用
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