詩に嘘を書くということ/白糸雅樹
 
に事実だったのは、この詩を思いついた時に食器を洗っていたことと、我が家では欠けたどんぶりや急須をそのまま使っているということであって、私はまったく家出したくなってはいなかったし、「荒れた生活」を送ってもいない。よくできた夫と一緒に、いたって幸福にくらしている。欠けた皿と荒れた生活を結びつけたのは、単なる思いつきというやつである。

 先日、畏友の日記で、詩を描くということに関して信条としていることとして、「事実に反しないこと」を挙げているのを見てかなり驚き、人によって詩を書く信条というのはずいぶん違うものだと感じ入った。私は、詩が事実そのままであれば、たんなる心情の吐露ではないかと後ろめたさを
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