自分を見つけてしまう色分けされた世界 書評『流砂による終身刑』/イダヅカマコト
 


液体金属で出来ていた私たちの会話
流し込み ろ過しあい
伝達しあった私たちの言語。
それは常温から生まれ熱を遡り
なんとも知れぬ空へと気化した。
夜を抜けるための唯一の道具。
私たちは常に言葉を傷め続け
その輪郭を更新した。
美しい模様、形、色、
じわり染み出る感情、平和、濃淡、真偽、
金属質なら何でも映せる。
私たちは交互に分割され連続し
螺旋を思いついたのはあなただ。
肉体は私たちの意図を理解した。
そして凝結
述語が剥がれ落ち肌があらわになったあなたの匂いに
胸は形を失念した。



この詩集の中の詩のタイトルのほとんどが、
多分詩人本人が作った言葉、とくに画数の多い漢字で埋め尽くされていることも
詩がつくる世界の不安定さを形作っているような気がします。

そして、この色や物体の名前ではっきりと区分けされている世界の中に、ときどき私自身も住んでいると思えるのが不思議な詩集です。

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