折り返しのある男/atsuchan69
だろう、しかしこの男の場合、靴とベルトの色や素材の組み合わせに頑固な拘りがあった。もちろん小粋な装いやビジネス、あるいは冠婚葬祭といった儀礼に応じて当然アクセサリー等も使い分けるというのはきわめて常識ではあるが、独自のスタイルに固執するあまり、たかがセンス云々のために一度ドグマに陥るともうダメだ、これが厄介でまったく融通が利かなくなるのである。若いころには「お出かけ」のたびに彼はよく妻と口論をした。でもやがて人生に疲れてきたためなのか・・・・二人子供を産んだ自分の妻が、着飾っていようがなかろうが果たしてどうでもよくなっていた。
だいたい、背広にしてもシャツにしても今ではオーダーメイドさえ誂
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