銀河鉄道/しべ
 
月が、まるい

鋼のアーチを弧で結ぶのは銀
遠く爪弾く赤い信号と
浮いた音符がふたつ踊れば
わかるかな?

それは大きな声で
東へと口をあける始発駅だ

切り炭を裂き
聳え立つ汽笛が直線を弾く様は
まったく雉にそっくりで
泣きだしそうな幼い僕を震わせる

22時12分
ホームの先から零れる流線を
寡黙な指先で客車と認め
寝台とカーテンの青白さを覗き見れば
やがて糸杉のように
俯きがちな影が顎をさすり
誰だろう
鞄と封書、気に入らなかった帽子を握ったまま
小指で手摺りをひっ掻くのだ

焦がした鴉

蒸気機関の上下左右が
ベンチ横の案内塔を

[次のページ]
戻る   Point(0)