二千九年、LOVE/捨て彦
であッた。
或る日、詰まり老人が失踪する前日にも伊藤らは河原で酒盛りをしており、その際に老人が伊藤らに近づき一言だけ云ッた事がある。
「わしはもう此の家はイランでェ、これからはアンタらが好きに使ッて呉れ」
酔ッた伊藤とナンシイは其の時は言葉の意味をハッキリと理解する事も無く、曖昧な空返事で相槌を打つばかりであッたが、その後も一向に家主の帰宅する事の無い家を横目に酒盛りを続けていくに当ッて、何時の頃からか誰とも無く其の家に足が向く様に成ッた。此れが今の会合の形の最初であり、此れを境に会合の入会者がボチボチと増えて行く事に成る。
平屋、と一言で云ッても、実際はトタンを張り合わせたばかりの、併し
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)