二千九年、LOVE/捨て彦
 
田さん、僕にも注いで貰えますか。… ……、あ。……ハイ、おッとッと。有難う御座います」
「イヤ、併し。芙蓉ちゃんもよく友人を連れてくる気になッたよなァ」
「……と云うと?」
「何云ッてるんだい。芙蓉ちゃんはこの会合のこと、あまり心好く思ッていないぢゃないか」
「そうなんだろうか?」
伊藤は表面張力の張ったGlassに一口付けながら云ッた。其れを半開きの眼で追いながら
「そうだよ。ッて、君は彼女と付き合ッていながら知らなかッたのかい?彼女が不満を漏らすのを聞く事もあるだろう」
とナンシイが云う。
「…いや」
「そうなのか?」
「ああ」
ナンシイは少し溜息しつつ伊藤の方を向いた。
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