二千九年、LOVE/捨て彦
 
た。
「そうか。僕はてッきり君たちは話が通じていると思ッていたのだが…」
「芙蓉がそのようなことを云ッたのかい?」
「いや、そうは云わないが…只なんというか、そういうのは雰囲気でわかるものぢゃないか」
「…雰囲気」
「なんとなくは、分ッてはいるんだよ皆。そう思われるのも無理は無い。元元世間の落伍者で酒盛りを始めたのがきッかけなんだから。今でこそこうやッてまともに職にありついてる人間もいるが、最初の頃の僕たちを目の当たりにしちゃァ、懇意にして下さいと婦女子に懇願すること自体、恐れ多いことだヨ。今だッてこうやッて、身体を壊しているにも関わらず、職にもつかず飲み歩いている僕の事を、彼女は好く思
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