二千九年、LOVE/捨て彦
 
シイに云ッた。
「いえ、皆さんとは初対面ですヨ。其れはアノー、ネェ、芙蓉さん…」
小山は芙蓉の顔を追いかけて後を任せた。上着を畳んでいた芙蓉が其れを受け取ッて、
「以前から私が話していたんです。ホラ、此処に来る人ッて入れ替わりが多いじゃないですか。誰が誰だか分らなくなりそうで。だから最初に一通り話しておこうと思ッて。それに、リコちゃんも聞きたそうだッたしネ。」
「黒田さんと伊藤さんも直ぐに分りました」
申し訳なさそうに小山は小さくなる。
「ヘェ、ソイツは恐れいッたなア、」とナンシイは伊藤を見る。伊藤も口角を上げて愛想する。
「すぐに分られるなんて、なんだかオ尻がこそばゆいなア…」

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