死におびえるヴィジョン/たちばなまこと
私は死におびえている
新宿アルコット 地下三階へ降りる階段で
伊勢丹ガールズのレストルームで
「緊急地震速報が流れたら伏せるなどの安全な体制をとってください」と
女の人の青白い声でアナウンスされる
私は蛇のように
隙間からだって逃げられる
あの子
お午睡中に地震がきて
目を閉じたままになってしまったらと
ヴィジョンが
具象画を描くように
私はあの子を両手に抱いて嗚咽をもらしながら
傷ついた誰かの子を助けに走れるのか
あの子の
パパが病気を告げられたときにも
ヴィジョンが
私は大きなおなかを支えながら黒い服を着て
これから何処へゆけばいいとサンドベージュの風に吹か
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