遺影のまなざし ー四十九日前夜ー /服部 剛
くたびれた足を引きずって
いつもの夜道を帰ってきたら
祖母の部屋の窓はまっ暗で
もう明かりの灯らぬことに
今更ながら気がついた
玄関のドアを開いて
階段を上がり入った部屋の
机の上に置かれた写真立てに
いつのまにか納まった
祖母の顔
小さい額縁に吸いこまれた
(もう一つの世界)から
職場の老人ホームで
お年寄りと僕が
笑って過ごしたひと時を
眺めていたように微笑する
祖母のまなざし
四十九日前夜
食堂のいつもの席に
曲がった背中の無いまま
時の流れ続けていることを
今も不思議に思うのです
毎朝門を
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